試すべきこと 1: 正式な方法で伊勢神宮に参詣する
伊勢神宮について


伊勢神宮は全国に約8万社ある神社の総本宮であり、日本国民の総氏神とされている。
伊勢神宮には2つの正宮がある。: 天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祀る皇大神宮(こうたいじんぐう)すなわち内宮(ないくう)と、衣食住の守護神である豊受大御神(とようけのおおみかみ)を祀る豊受大神宮(とようけだいじんぐう)すなわち外宮(げくう) だ。
神宮の威厳を守るため、正宮での写真撮影は制限されている。内宮では石段の下から、外宮では鳥居の外からのみ撮影が許可されているのだ。だから、この記事では、伊勢神宮の説明のために、いくつかのイラストを使っている。だからこそ、あなた自身で伊勢神宮を訪れ、美しく神聖な正宮を脳裏に焼き付けていただきたいと思うのだ。
古代、伊勢神宮は国家全体の氏神であり、公的な祭祀は天皇自身が執り行っていたのだ。時代が下るにつれて一般庶民も参詣するようになり、鎌倉時代(12世紀後半から14世紀前半)中期には、多くの人々が伊勢神宮を参詣したという記録が残っている。

正宮は公的な祈りを捧げる場所と言われるが、必ずしも個人的なことを祈っては、いけないわけではない。まずは自分の日常に感謝し、その上で個人的なことをお祈りすることをお勧めする。
伊勢神宮には昔から「おみくじ」がない。おみくじは近くの神社で買うためだ。伊勢神宮を訪れる人々にとって、伊勢神宮参詣の日は、おみくじで確認するまでもなく、「大吉」であるに違いない。
伊勢神宮には式年遷宮という仕組みがあり、20年に一度、すべての建物が建て替えられる。こうして、神宮は今でも古来の姿を保っているのだ。式年遷宮には、神社の建物の建築に携わる人々の技術を後世に伝承するという重要な役割もある。ただ、こうした理由から、伊勢神宮は世界遺産に選ばれないのだとも言われている。
正式な参詣の仕方
外宮


伊勢神宮では外宮から内宮へと順番に回るのが正しい順序だ。
まず外宮の入り口である表参道の火除橋橋(ひよけばし)を渡り、橋のたもとにある手水舎で手と口を清める。
お清めが終わったら、はじめに本宮を参詣してから、境内にある3つの別宮と6つの神社を参拝するのが正しい参詣の順序だ。
内宮


内宮はその入り口である宇治橋からスタートだ。橋を渡って右手に進むと神苑があり、神苑を抜けると火除橋があるので、これを渡る。
火除橋を渡たったところに、手水舎があるので、手と口を清める。さらに進むと、五十鈴川沿いに石畳の場所があるので、そこで再び手を洗うのだ。
実は、この五十鈴川沿いの石畳のエリアは、手水舎ができる前から手を洗うために存在していた。このため、手水舎ではなく五十鈴川で手を洗う参詣者が多い。
お清めをしたら、まず本宮を参拝する。そして、宇治橋の方に戻りながら、他の神社を参詣するのが正しい順序だ。
神社の参拝のルール
1.ます神社に向かって深く二度お辞儀をする。2.次に手を2回たたく。 3.最後にもう一度深くお辞儀をする。.
試すべきこと 2: おかげ犬みくじを買う
おかげ参り

江戸時代(17世紀初頭から19世紀半ば)、伊勢神宮の人気は過熱した。江戸時代の人々の伊勢神宮への憧れは、「一生に一度はお伊勢参り」と呼ばれた。江戸時代に行われた伊勢神宮への集団参詣を「おかげ参り」という。直訳すると、”あなたのおかげでできるお参り”だ。数百万人規模の集団参詣が、約60年周期で3回行われたと言われている。
「おかげ参り」の名前の由来には諸説ある。一説には、人々が平穏な生活が送れるのは、天照大御神のおかげだと天照大御神に感謝の意を表したというもの。また、伊勢神宮参詣の道中、さまざまな形でお世話になった人々への感謝の気持ちを表したという説もある。
おかげ参りは、江戸からでも片道約15日、東北からだと約100日かかる大変な旅だった。
奉公人が主人の許しを得ずに参詣したり、子供が親の許可を得ずに参詣したりすることもあった。それが可能だったのは、道中で多くの人々から金銭などの施しを受けることができたからだ。現代の常識から考えると、当時の人々の寛容さに感心させられる。
おかげ横丁

おかげ横丁の名前は「おかげまいり」に由来する。伊勢の名産品や土産物、飲食店など約50店舗が軒を連ねる観光スポットだ。

おかげ横丁では、江戸時代や明治時代の木造建築が細部に至るまで再現されており、まるで当時の建物のようだ。

上の写真は絵馬が飾られている様子だ。
絵馬は神様に願い事をするときに神社に奉納するものだ。 絵馬は直訳すると絵の馬だが、参詣者が願い事を書く木の板だ。かつては本物の馬を奉納する風習もあった。
おかげ横丁は一年を通してお祭りや催しもので賑わい、獅子舞や和太鼓の演奏、横丁紙芝居の口演などを楽しむことができる。

上の写真は獅子舞だ。獅子頭を被って踊るが、実は獅子の頭ではなく架空の動物の頭だ。五穀豊穣を祈り、悪霊を祓うために踊られる。
おかげ横丁の詳細については、こちらの「おかげ横丁」のホームページから。
おかげ犬みくじ

おかげ参りをしたのは人間だけではない。江戸時代(17世紀初頭から19世紀半ば)には、病気で伊勢に行けなくなった飼い主の代わりに、2カ月かけて伊勢神宮に参拝した犬が、伊勢神宮のお守りをもらって帰ってきたという話が残っている。
こうした犬の伊勢神宮参詣は、幕末まであちこちで見られたようだ。犬が安全に伊勢神宮に参詣できるように、道行く人々が犬の旅の費用を負担したという記録も各地に残っている。
犬の首にはしめ縄と”お伊勢参り”と書かれた巾着がかけられ、道中の人々はその巾着の中のお金で餌を買って犬に与えた。犬の旅の安全のために追加のお金が巾着に入れられることもあったという。先人たちのそんな行動に感動し、温かくなる思いだ。
そんな犬を「おかげ犬」と呼び、おかげ横丁では「おかげ犬」のおみくじである「おかげ犬みくじ」を買うことができる。江戸時代の伊勢神宮に参詣する犬たちの様子や、当時の人々の温かさを想像しながら、「おかげ犬みくじ」を買ってみてはいかがだろうか。
試すべきこと 3 : 伊勢エビの刺身を堪能する
伊勢エビ

伊勢エビの文字通りの意味は伊勢(伊勢神宮のある地域)で獲れるエビだ。
伊勢エビの名は1566年の古文書に見られ、古くから日本人に親しまれてきたことが分る。伊勢エビは、江戸(昔の東京)や大坂で大名などへの新年の献上品として非常に高値で取引されていたと記されている。

伊勢エビを正月飾りにする習慣は、現在でも残っている。おせち料理にも伊勢エビが使われる。伊勢エビは他のエビよりも、その見た目が厳しく評価され、流通するの際に2本の触角や足の一部が折れているだけでも、その価値は大きく下がる。殻付きで出されたときの見栄えの良さに価値があるのだ。
お節について詳しく知りたい方は、こちらから: “知っておきたい美しく箱におさめた2つの日本食” / “お節”
伊勢エビとロブスター(オマールエビ)
伊勢エビはよくロブスターと比べられる。ロブスターは伊勢エビと比べると、身がプリプリしている。ロブスターは火を通した方が美味しいので、塩茹でしてから、溶かしバターをつけたり、テルミドール(殻付きのロブスターの身を半分に割り、濃厚なホワイトソースをかけ、チーズをふりかけて焼いた料理)にしたりする。一方で、伊勢エビの代表的な食べ方はやはり刺身だ。もちろん、焼いても揚げても美味しいのだが。
伊勢エビの刺身を味わう

伊勢エビの刺身を食べると、その甘さに驚くだろう。きめ細かく滑らかな舌触りで、濃厚な旨みが詰まっている。
伊勢に来たら、伊勢エビの刺身は外せない。鮮度が命の伊勢エビの刺身は、伊勢でしか食べられないからだ。旬も重要だ。伊勢エビの旬は秋から冬にかけてだ。水温が下がると、伊勢エビは体内に旨味成分を蓄え始め、さらに美味しくなる。季節を選べるなら、この季節を選ぶべきだろう。
伊勢エビの味噌汁

伊勢エビの味噌汁は、おめでたい席で出され、食卓を豪華に見せてくれる。伊勢エビの身は刺身や調理して食べられるが、頭は伊勢エビの濃厚な出汁が出るので味噌汁に使われる。
伊勢エビ専門店で食べることができるが、どんな店でもあるわけではないので、どうしても食べたい場合は、入店前にメニューを確認する必要があるだろう。
ネイティブ日本人からのアドバイス
二見へ行く

江戸時代(17世紀初頭から19世紀半ば)の伊勢神宮の由緒正しい参詣のルートは、二見浦の”禊(みそぎ)”から始まり、外宮、内宮を参詣し、朝熊山 (あさまやま)に登るというものだった。
当時は二見浦で潮水を浴びて禊を行ったが、現在は二見興玉神社に参詣して禊を行っている。

二見興玉神社の近くに、大きなしめ縄で固く結ばれた2つの岩(夫岩と妻岩)があり、「夫婦岩」と呼ばれている。夫婦岩は縁結びのシンボルとして有名だ。
5月から7月にかけては、夫婦岩の間から朝日が昇るのを拝むことができる。また、10月から1月の満月の時期には、夫婦岩の間から月が昇るのを見ることができる。
伊勢の名物料理を堪能する
松阪牛


松阪牛の赤身は深い赤色で、凝縮された肉の旨みがある。きめ細かい霜降り、とろけるような食感、甘く深みのある上品な香りが松坂牛の特徴だ。海外では神戸牛の方が有名だが、松阪牛は神戸牛に匹敵する高級牛肉だ。

松阪牛は、ステーキももちろん美味しいが、日本で松阪牛を食べるなら、その美味しさを存分に味わうために、すき焼きを食べてみるのもよいだろう。
すき焼きについて詳しく知りたい方は、こちらから:“知っておきたい8つの日本食” / “すき焼き・しゃぶしゃぶ”
伊勢うどん

興味があれば、伊勢うどんもオススメだ。伊勢うどんは極太の麺を少量のタレにつけて食べる。タレは「たまり醤油」に煮干しと昆布のだし汁などを加えた黒くて濃厚なものだが、食べてみると見た目ほど塩辛くなく、むしろ甘みがあることに驚く。
普通の醤油の主原料は大豆と小麦粉が半々だ。一方、たまり醤油は大豆が主原料で、普通の醤油に比べて濃厚で甘みがある。
だし汁について詳しく知りたい方は、こちらから:“知っておきたい8つの日本食” / “だし”
伊勢うどんの麺は非常に太いが、表面はとても柔らかく、中はモチモチしていて、普通のうどんの食感とはまるで違う。その昔、全国各地から長旅をして、伊勢神宮へやってきた人々には、消化の良い柔らかい麺が喜ばれたことだろう。
伊勢うどんは極太麺なので、茹でるのにとても時間がかかる為、注文が入った時に、いつでも参詣客に提供できるように常に茹でていた。長時間茹でても伸びないので、茹で時間を気にする必要がなかったのだ。
アクセス情報
伊勢神宮(外宮・内宮)へ
外宮
近鉄「伊勢市駅」から徒歩5分
JR線「伊勢市駅」から徒歩5分
内宮
近鉄「五十鈴川駅」から徒歩30分
近鉄「五十鈴川駅」から、三重交通バスに乗り約6分、「内宮前」バス停下車
外宮から内宮へ
外宮の入口の表参道付近にある、三重交通バスの「外宮前」バス停(2番のりば)からバスに乗り約20分、「内宮前」バス停下車
おかげ横丁へ
内宮の宇治橋から徒歩5分
近鉄「宇治山田駅」から、三重交通バス内宮行きに乗り約20分、「神宮会館前」下車
二見興玉神社へ
JR線「二見浦駅」から徒歩15分