知っておきたい8つの日本食

Osechi(a traditional Japanese dish to celebrate the New Year) in three-tiered stacked boxes
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目次

寿司

A variety of sushi

歴史

A variety of sushi on a plate

江戸前とは東京湾のことだ。江戸前寿司は東京湾でとれた魚介を、江戸っ子が屋台で気軽に立ち喰いできるスタイルで提供したことが、その始まりと言われている。

気の短い江戸っ子が、新鮮な魚介をさっさと食べたいと、箸なしでも食べられる握りにしたものが考えだされた。立ち喰いの屋台でも食べられるようになり、ワサビも使われていた。

これが「江戸前寿司」で、今の日本の寿司の原型だ。この江戸前寿司は、1810年に華屋与兵衛が考案したものと言われている。1824年には「華屋」を開業、現在の寿司に近いものを提供したといわれる。

江戸前寿司は、屋台での立ち喰いの他にテイクアウトも行われていた。また、「おかもち」で運ぶ「もの売り」も当時から存在していたと言われる。

特徴

寿司はシャリ(酢飯)とネタ(魚の切り身)からなるが、単に酢飯の上に魚の切り身を乗せただけのものではない。 重要なのは寿司職人の伝統的な職人技である。

職人の伝統の技 #1- ネタの魚の切り方で味が変わる

魚を切る時の包丁の使い方は独特だ。包丁を思い切り寝かせて、すっと引くように切るのがプロの寿司職人の技だ。こうすると細胞が乱れずきれいに切れ、細胞内に含まれるうま味がしっかりと残る。押しつぶすように切ると細胞を潰してしまって、旨味成分が流れてしまい、せっかくの新鮮な魚も台無しになってしまう。

職人の伝統の技 #2- ネタに「シゴト」をする

飾り包丁を入れる
Sushi topped with fish filet with decorative knife

飾り包丁は、寿司ネタの見た目を美しくし、口の中でネタがほろっと解けるようにするのが目的。様々な飾り包丁の技法があり、包丁の入れ方によって、食感も変わるし味も大きく変わる。生姜や青ネギなどで彩り鮮やかに仕上げることも多い。

アナゴを煮る
Sushi with cooked eel on a plate

アナゴと塩を入れて揉んだ後に、沸騰したお湯を回しかけるとヌメリが白濁するので、タワシでこすって臭みの元となるヌメリを徹底的に取る。水、醤油、砂糖、みりんで作った煮汁で弱火でゆっくりと煮るとフワっとした煮アナゴに仕上がる。口の中でとろけるような食感が楽しめる。

ネタを炙る
Sushi with fish fillet of which surface is seared

ネタの表面を炙る事によって、表面の水分が失われて旨味が凝縮し、脂が表面に滲み出てくるので、うま味が増す。また焦げがもたらす香ばしさが加わる。味噌をぬったり、すだちなどのかんきつ類を絞って食べることもある。平目のエンガワ、サーモンやアナゴなどの炙り寿司がある。

職人の伝統の技 #3- 米粒と米粒の間

寿司のシャリは、炊いた米に酢を混ぜて作る酢飯を握るが、酢飯にしてべとつかないことが大切。したがって、「粘りが弱く粒が揃い、粒離れのよい米」が適している。

手に持っても崩れず、口の中でフワっとほぐれ、モチモチせずに米の粒がわかり、喉ごしがよいことが良いシャリの条件。その為には、米粒と米粒の間に適度なすき間があくように、シャリを握らなければならない。まさに寿司職人の一番の腕の見せ所だ。

深い話

赤酢で作る寿司

A sushi with red vinegared rice on a plate

一般に、寿司に使うのは米から作る米酢だが、酒粕から作られる赤酢という酢がある。米酢と比べて酸味が少なく、うま味がある。香りは高いが、米酢のようにツンとくる匂いは少ない。最近は高級店を中心に、この赤酢を使った赤い酢飯の寿司が楽しめる。

寿司を塩で ‐ オーケストラとソロ

A sushi chef sprinkling salt onto a sushi

寿司と醤油は最良の組合せ。魚の動物性のうま味と、醤油の主原料である大豆の植物性のうま味を同時に味わうことができるからだ。2つのうま味が組み合わさって相乗効果を生むので、言ってみればオーケストラ演奏のようだ。

一方で、近年、寿司を塩で楽しめる寿司屋もある。塩は一緒に食べる食材の味を引き出すことから、この食べ方では魚本来のうま味を楽しむことができる。こちらは、うま味のソロ演奏のようだ。

寿司はもともと脂肪分が少ないので、ワインと楽しむのが難しかった。塩の他にオリーブオイルなどを少量使えば、油分が補われ、ワインをしっかり受け止めることができる。寿司をワインで楽しむというのも一興だ。

だし

Bonito flakes which are shaved out of dried bonito

歴史

Japanese traditional foods made with seafood and vegetables

2013年12月4日にユネスコ世界無形文化遺産「和食:日本人の伝統的な食文化」が登録された。和食の基本にあるのが「だし」だ。だしの語源は「煮だし汁」。和食の椀物や煮物など、様々な料理の繊細な味づけのベースとなっている。いわば、「和食の命」である。

料理にだしを加えると、コクが増して味に奥行きが出るため、塩分や油分を減らしても、素材の味を生かした、しっかりとした味を作ることができる。健康意識の高まりで、和食が世界から注目される理由だ。

だしは、鰹節や昆布、椎茸などからとる。かたくちイワシからとる煮干しだしや、トビウオからとるアゴだしなどもある。

日本では長い間、肉食が禁止され、動物の肉のうま味のない食生活をしていたが、それを補うために、だしが発達したともいわれている。その歴史は1000年以上前の奈良時代に遡るといわれ、江戸時代の料理書には、だしの使い方が記載されている。

特徴

だしとうま味

Three ingredients for dashi which is dried bonito flakes, dried kelp and dried shiitake mushrooms

だしの主成分はうま味だ。うま味は、甘味、酸味、塩味、苦味と並んで基本となる味のひとつで、1908年に東京帝国大学の池田菊苗博士が発見した。うま味の基となるうま味物質には、グルタミン酸やイノシン酸の他、グアニル酸などがある。

日本人が1000年以上前から、昆布や鰹節のだしを使っていたのは、経験的にうま味の美味しさを知っていたからではないだろうか。複数のだしを組み合わせて使うことを「合わせだし」といい、より深く複雑なうま味が出せる。江戸時代から使われていたようで、鰹だしと昆布だしの合わせだしが一般的だ。

1985年の「第一回うま味国際シンポジウム」を契機にうま味は、「UMAMI」として、世界で知られるになった。今や世界中のシェフがUMAMIに強い関心を持ち、自分の料理にとりいれようと研究を続けている。

「鰹だし」と「昆布だし」 ー 江戸と京都のだしの違い

Map of Japan indicating why Edo could get bonito and Kyoto could get kelp

特に幅広い料理に使われるのが、「鰹だし」と「昆布だし」だ。江戸を中心とした関東では鰹だし、京都を中心とした関西では昆布だしが発達した。

江戸では、大平洋岸で鰹が獲れた。一方で、京都で使われた昆布は、北海道で採れ、貿易船である北前船で日本海を経由して福井に運ばれ、それから陸路で京都まで運ばれた。それらが、だしとし活用され、各地域の独特の料理をかたち作った。

鰹など赤身で味の濃い魚を多く食べる関東では、味のはっきりした鰹だしと濃い口醤油を使った料理が発達した。

関西では、瀬戸内海で獲れる鯛など、白身の魚を多く食べていたため、淡白な白身の魚と相性のよい上品な昆布だしと薄口醤油を使い、素材の味を生かした料理が主流となった。

深い話

貝のだし

A hot pot of nabe with shellfish and vegetables

和食のだしは、鰹だし、昆布だし、椎茸だしが一般的で、料理のベースとして広く使われているが、忘れてはならないのは、貝の出しだ。料理のベースというよりも、貝の味自体を楽しむ汁物や鍋などがその代表例だ。あさりの酒蒸しや、しじみのお吸い物、蠣鍋などがすぐに頭に浮かぶ。

貝だしの旨味の基となる物質はコハク酸だ。酸味と渋みが特徴の濃いうま味が特徴。鰹だしや昆布だしのように合わせだしで使うことは少ない。時間をかけて煮出さなくても、すぐに複雑でコク深い味を出すことが可能だ。

ラーメンスープのだし

だしは伝統的な和食にだけ使われているのかと思いきや、実は日本の国民食であるラーメンにも使われている。豚のうま味と鰹だしのうま味の両方を楽しめる和風とんこつラーメンや、他の魚介と鰹だしの風味のギュッとつまった魚介系スープのラーメン、鶏ガラスープと鰹だしを合わせ、あっさりしとしながら深いコクのある醤油ラーメンなどがある。

最近はアゴだしを使ったラーメンも人気だ。アゴだしとはトビウオから取る高級だしで、独特の魚臭さがあまりなく独特な甘みがあり、アゴだしラーメンで有名な店も多い。

ラーメンについて詳しく知りたい方は、こちらから:“知っておきたい8つの日本食” / “ラーメン”

鍋のだし

A hot pot of nabe with shrimp, chicken and vegetables

鍋のだしについて考えるのは興味深い。日本の冬の料理といえば、鍋だ。鰹だしや昆布だしのきいた醤油ベースや塩味のスープに、鶏肉や鱈、鮭、海老やカニ、蠣などの様々な魚介や野菜を入れ、ぐつぐつと煮込みながら仲間と鍋を囲む。

日本の鍋は、具の種類も多く、食べながら具材を次々に投入していく。こうすることで、もともと入っていた鰹や昆布のだしの他に、鶏肉や魚介、野菜からもうま味成分がスープの中に溶け出す。こうして、複雑極まりない、奥深いコクのスープができあがる。イノシン酸、グルタミン酸、グアニル酸、コハク酸などが混然一体となって、うま味の多重演奏となる。

そして、鍋の具材を食べ終わった後には、ご飯を入れて、再度煮込むと、その米粒の中に、うま味がたっぷりしみ込んだ極上の雑炊ができあがる。この雑炊を「シメ」と称して鍋を食べるときの楽しみにしている日本人は多い。

卵かけご飯(TKG)

A raw egg on a rice bowl of steamed rice

特徴

卵かけご飯は日本人のソウルフード

Japanese breakfast consists of steamed rice with raw egg and miso soup

日本人はご飯に生卵をかけて食べるのが大好きだ。アツアツのご飯に生卵と醤油をかけて、かき混ぜる。卵と醤油の香ばしい風味のする米粒をせっせとかきこむ。米粒に卵が“絡んだ、やわらかさや、のど越しがたまらない。

卵の動物たんぱくの旨味と、醤油の原料である大豆の植物たんぱくの旨味の相乗効果が味覚を刺激する。シンプルだが、簡単にできて、至福の時間を楽しめる日本人にとってのソウルフードだ。

寿司や刺身に代表される「生食文化」は、世界に類をみない日本独特の文化だが、卵かけご飯もその典型といえる。

寿司について詳しく知りたい方は、こちらから:“知っておきたい8つの日本食” / “寿司”

日本では、なぜ卵が生で食べられるか?

Lots of eggs lined up on a special tray

一般に卵の殻の表面にはサルモネラ菌が付着していて、卵は生では食べられないというのが世界の常識。卵を生で食べるという話は、かなりの驚きをもって受け止められる。では、なぜ日本では卵は生で食べられるのか?日本では生で食べることを前提として、卵の生産・管理・輸送システムが確立しているからだ。

親鳥が産んだ卵をベルトコンベアーで自動的に集めて洗卵選別機にかけ、消毒液で卵殻(卵の外側)を洗浄・殺菌し、表面のヒビ割れなどを自動で取り除いた上でパック詰めする。

また養鶏場において抗生物質を投与して親鶏がサルモネラに感染しないようにしている。配送もチルド温度帯で行い、「生で食べる」前提で賞味期限設定を行っている。

深い話

卵かけご飯専用醤油

A bottle of soy sauce specialized in raw egg over rice

日本人の卵かけご飯へのこだわりを示すものとして、「卵かけご飯専用醤油」がある。スーパーや百貨店へ行くと、専用醤油が売られている。

醤油+だし汁が味の基本になっている。醤油の味が前面に出て、醤油と卵の旨味を楽しめるものもあれば、醤油が控えめで、卵とご飯の味を堪能できるようにしたものもある。また、だし汁はかつお・昆布・などさまざまなものが使われている。

複数の出汁を合わせたものもある。それぞれ味わいや香りに違いがある。トリュフやウニの入った高級醤油まである。

生卵の変わり種

Two types of raw egg

のせる卵も単なる生卵ではなく、醤油漬けにした卵黄を使う、濃厚卵の卵かけご飯もある。

醤油漬けの卵黄は、生卵から卵黄だけを取り出し醤油に漬け込んで作る。卵を殻ごと一旦冷凍してから、解凍すると、卵黄がより簡単に取り出せるため、最近はこの方法で作ることが多い。卵黄の旨味をストレートに感じる、ねっとりと濃厚な卵かけご飯が楽しめる。

温泉卵をのせた半熟卵かけご飯もある。温泉場で温泉の熱を利用して作られたのが、「温泉卵」の名前の由来だ。卵黄は半熟、卵白は半凝固状態になるように茹でたもので、卵黄よりも卵白が柔らかい。卵黄に箸を入れると、薄皮が破れて中の半熟の卵黄がトロリと流れ出す。

醤油漬けにした卵黄、温泉卵のいずれを使う場合も、普通の卵かけご飯よりも、卵黄の旨味と濃厚さを楽しむことができる。

生卵を使うのは卵かけご飯だけではない。ー生卵によせる日本人の思い

Udon (thick Japanese wheat noodles) with raw egg and seafood rice bowl with raw egg

日本人の生卵に対する思い入れは深い。卵かけご飯以外では、すき焼きのつけダレに生卵を使うのが一般的だが、その他にも様々なメニューにトッピングする。代表的なのは、うどんや丼ものにのせる使い方だ。また、冷奴にのせてもおいしい。

卵は、素材をやさしく包み込み、調味料の味をまろやかにし、ねっとりとした旨味を加える魔法の食材なのだ。卵黄の鮮やかな黄色と、ネギや、大葉の緑色との組み合わせは、見た目も美しく、また食欲をそそる。

すき焼き・しゃぶしゃぶ

Sukiyaki and shabu-shabu in the process of cooking

すき焼きの歴史と特徴

Sukiyaki in the process of cooking

「すき焼き」は世界に知られる代表的な和食だ。薄切りの牛肉をネギなどの野菜と一緒に醤油と砂糖などで味付けし、溶き卵をつけて食べる。実は日本では幕末までは牛肉は一般には食べられていなかった。

幕末から明治にかけて東京や横浜に外国人向けの屠牛場ができると、関東で「牛鍋屋」が流行し、文明開化の象徴となった。当時の牛鍋は牛肉を味噌だれで煮ていたが、鉄鍋に、「割り下」(醤油や酒、砂糖、だしで作った調味液)、牛肉、野菜を入れて煮る料理へと変化していった。

一方、関西では、だしに醤油と砂糖を入れた汁で鯛などの魚を煮るすき焼きという料理が昔からあった。明治に入ってから、魚の代わりに牛肉を使い、牛肉を焼いて調理する関西風のすき焼きへと発展した。

1923年の関東大震災で、東京の多くの牛鍋屋は被害を受け閉店し、その後、関東に関西風のすき焼きが伝わり、牛鍋と融合して「関東風のすき焼き」が誕生した。

Kanto style sukiyaki and Kansai style sukiyaki in the process of cooking

こうした経緯から、関東と関西では、すき焼きは調理法が異なることになった。すなわち、関東では、割下を鍋に入れて沸かしてから、牛肉や野菜と一緒に煮るのに対し、関西では、鍋に牛脂をひき、牛肉の表面を焼いてから、砂糖や醤油などを入れて味つけし、後から野菜を入れ、野菜から出る水分を使って煮ていくのだ。

ところで、「すき焼き」という名前はどこから来たのか。これには2つの起源説がある。1つは江戸時代前期の「杉やき」で、鯛などの魚介類と野菜などを杉材でできた箱に入れて味噌で煮る料理だ。もう1つは、江戸時代後期の「鋤やき」で鋤を火にかざし、鶏肉や魚介類などを加熱する料理だ。

しゃぶしゃぶの歴史と特徴

Shabu-shabu in the process of cooking

そしてもう1つ。和食の牛肉料理で忘れてはならないのが「しゃぶしゃぶ」だ。 ごく薄切りの牛肉を、鍋に煮え立たせた出し汁にサッとくぐらせて、ポン酢やゴマダレにつけて食べる。

しゃぶしゃぶ用の肉はとても薄くスライスされているので、短時間で火が通り、肉が固くならない。肉は箸からはなさず、出し汁の中を泳がせるように火を通す。

しゃぶしゃぶの原型は中国の火鍋料理であるという説がある。中国の火鍋が羊肉を使うという点以外は日本のしゃぶしゃぶとそっくりだからだ。中央に通気孔のあいた火鍋に使う鍋が、現在のしゃぶしゃぶ鍋の原型となっているとも言われる。

他方、日本で食べられていた水炊きがその起源だとする説もある。関西では、昆布の出汁で、味付けしない肉や野菜を煮る、しゃぶしゃぶに近い料理が昔から存在していた。  

しゃぶしゃぶという名前については、1952年に大阪のスエヒロが、しゃぶしゃぶを考案してメニュー化し、その後に「スエヒロのしゃぶしゃぶ」、「肉のしゃぶしゃぶ」と商標登録している。店員がおしぼりを、たらいですすいでいる様子が、牛肉をだし汁にくぐらせる調理法と似ていることや、その時に聞こえる水の音をヒントに、店主が「しゃぶしゃぶ」と名付けたのだそうだ。

すき焼き・しゃぶしゃぶ についての深い話

和牛

和牛 — 日本人の牛肉へのこだわり
Thinly sliced wagyu in the shape of a flower
Thinly sliced wagyu with vegetables

日本には様々なブランド「和牛」がある。和牛は、明治時代以降に国外から来た品種と在来種とを交配して日本人の好みに合うように品質改良したものだ。

和牛には「和牛香」と呼ばれる甘い脂肪の香りがある。「サシ」と呼ばれる薄い脂肪の層が赤身の間に入り込むことにより作りだされる。サシがキレイに入った肉はおいしそうに見える。こうした肉を「霜降り肉」という。

実際に食べると、とろけるような食感だ。アミノ酸が含まれる赤身部分の旨味と脂の香り、そしてととろける食感が良質の和牛の条件だ。

代表的なブランド和牛に、その飼育する土地の名前を冠した、松阪牛(三重県)、米沢牛(山形県)、飛騨牛(岐阜県)、近江牛(滋賀県)、但馬牛(兵庫県)などがある。

世界で有名な神戸牛(Kobe Beef)は、神戸市の存する兵庫県の但馬牛 のうち、一定の基準を満たしたものをブランディングしたものだ。

和牛は海外でも人気だが、その輸出する部位は地域によって異なる。薄切りの牛肉を食べる文化のあるアジア向けは一頭分の部位を輸出するが、欧米ではステーキ向け需要が大きいため高級部位のサーロイン等がほとんどの輸出を占める。

すき焼きとしゃぶしゃぶに使う肉
Illustration explaining the parts of beef
Images and names of different parts of beef

すき焼きは牛肉を煮たり焼いたりする料理、しゃぶしゃぶは、牛肉を出し汁でさっと火を通す料理なので、適した牛肉も異なる。

すき焼き用の牛肉の厚さは、約1.8mm~2.5mm、しゃぶしゃぶでは、約1.5mm~2.0mm(1mmくらいの場合もある)とされる。

すき焼きは煮たり焼いたりするので、調理に耐えるように肉にある程度の厚みが必要だ。肉が固くなる前に火が通る薄さだが、しゃぶしゃぶよりは厚くて、しかも柔らかいことが求めれるので、サーロイン、肩ロース、リブロースなど脂肪のやや多い部位が向いていると言える。

一方、しゃぶしゃぶは、肩ロースなどがおいしいが、あっさりめの味を好むならモモもおススメだ。要は好みの問題だ。

すき焼きの溶き卵

Beaten egg in a small plate

すき焼きには溶き卵をつけて食べるのが定番だ。では、その理由は何か。溶き卵をつけるのは、アツアツのすき焼きを食べるときに、火傷をしないために始まった食べ方だと言われている。

もちろん、卵がすき焼きの味をまろやかにするのも大きな理由だろう。砂糖と醤油の濃い味と卵の旨味が融合して、ねっとりと濃厚でまろやかな味に仕上がる。

牛肉を食べ慣れない幕末や明治の頃の日本人が、気になる牛肉の匂いを消すためだったという説もある。

赤ワインのすき焼き — 醤油、砂糖と赤ワインの相性は抜群!

赤ワインを割り下に加えることで、フルーティな味わいになるため、すき焼きのしつこさが和らぎ、さっぱりとしたすき焼きになる。具材を洋風にしてもおいしい。トマトを入れたり、椎茸の代わりに、マッシュルームやエリンギを使っても美味しい。

焼きしゃぶ — 肉の美味しさとヘルシーさを追求

Yaki shabu (grilled shabu-shabu) lifted with chopsticks

最近のトレンドとして「焼きしゃぶ」がある。しゃぶしゃぶ用に薄くスライスした肉を、鉄板の上でサッと焼いて食べる料理だ。

ふつうのしゃぶしゃぶ同様に、箸から肉を離さないで高温の鉄板で滑らせるように表裏を短時間で焼く。余分な脂が落ち、表面はカリっと仕上がる。

焼いた牛肉で、細切りにした野菜を巻けば、肉と野菜が同時に食べられて、とてもヘルシーだ。ふつうのしゃぶしゃぶのように、ポン酢やゴマダレをつけて食べる他、塩やわさびをつけてあっさりと食べるのもおススメだ。焼きしゃぶの専門店もある。

お好み焼き・たこ焼き

Okonomiyaki and takoyaki on a plate

お好み焼きの歴史と特徴

Monjayaki and okonomiyaki in the process of cooking

「お好み焼き」の起源は、茶人の千利休が茶菓子として提供した「ふの焼き」と言われる。小麦粉を水と酒で練った生地を薄くのばしてから焼き、味噌をぬって丸めたもので、現在のお好み焼きのように具材はのっていなかった。

時代が下り、明治時代になると「もんじゃ焼き」が東京で登場した。現在のお好み焼き同様に野菜が使われ、子供のおやつとして提供された。

大正時代には関西で、野菜の他に、挽肉やスジ肉、コンニャクなどを加え、当時の日本ではまだ一般的ではなかったウスターソースを塗ったものが、「洋食焼き」として食べられはじめた。やがて、それが関西から全国へと広がった。

洋食焼きは当時1枚1銭で売られていたので「一銭洋食」と呼ばれた。この洋食焼きが、現在のお好み焼きの原型となったといわれる。

現存する最古のお好み焼き店は、東京浅草の「染太郎」といわれている。お好み焼きは、今では日本を代表するB級グルメで、海外でも大人気の日本食だ。

Kansai style okonomiyaki and Hiroshima style okonomiyaki in the process of cooking

お好み焼きの両横綱は、大阪の「関西風お好み焼き」と「広島風お好み焼き」だ。関西風お好み焼きは、溶いた小麦粉、擦った山芋、卵の生地にキャベツや天かす、紅ショウガなどを混ぜたものを焼く。豚肉などのトッピングは、先に焼いておき、その上から生地をのせて焼く場合と、生地の上にのせて裏返して焼く場合がある。いずれもパンケーキのようにふんわりと仕上がる。

広島風お好み焼きは、まず、鉄板に生地を薄く敷いて焼き、その上にキャベツを山盛りにして、もやし、イカ天、豚肉などを重ねてから、ひっくり返して蒸し焼きにする。

その横で中華麺を焼いて焼きそばを作っておく。そして、焼きそばの上に、お好み焼きを、キャベツを下にしたままのせる。

鉄板に卵を割り入れ、黄身をほぐして白身と混ぜながら円形に焼く。その上に、お好み焼きを、焼きそばを下にしたままのせる。

そして再度ひっくり返して焼き上げる。(上から、卵、焼きそば、キャベツ、生地の順になる。)こちらは高さもありボリューム満点だ。

広島風では中華麺は必須アイテムだが、関西風では通常、中華麺は使わない。関西風でも中華麺を加えるバージョンがあり、これを「モダン焼き」と呼んで、通常のお好み焼きと区別している。関西風、広島風のいずれも、最後にソースをかけて仕上げる。最近ではその上から更にマヨネーズをかけることが多い。

たこ焼きの歴史と特徴

Akashiyaki and takoyaki on a plate

「たこ焼き」のルーツの1つは、「明石焼き」だ。江戸から明治時代に明石で生まれた郷土料理だ。明石ではタコがたくさん獲れたからだろう。卵とダシ、小麦粉、でんぷん粉などを混ぜた生地に、切ったタコを入れて丸く焼いたもので、出し汁につけて食べる。

2つ目のルーツは大阪で登場した「ラジオ焼き」だ。小麦粉を出し汁で溶いて、肉やスジ肉、コンニャクなどを入れて丸く焼いたものだ。目新しい食べ物だったので、当時ハイカラで高級品の代表であった「ラジオ」から名付けられた。

昭和10年に、大阪の「会津屋」が、「明石ではタコを入れている」という客の声に着想を得て、ラジオ焼きにタコを入れたものを「たこ焼き」として発売したといわれる。

たこ焼きは、第二次世界大戦後には、「洋食焼き」をまねて、ソースをかけて提供されるようになった。最近ではお好み焼き同様、海外でも大人気で「サムライボール」とも呼ばれている。

Takoyaki in the process of cooking

たこ焼きは、半円形の穴のあいたタコ焼き器で作る。穴に生地を流し込み、次にタコ、ネギ、紅ショウガなどを入れていく。そして穴からはみ出た生地を、串を使って穴の中に入れていく。少しすると、穴のフチの部分の生地がぷっくりと膨らんでくる。

ここから、たこ焼きを丸く焼き上げていくのだが、少しコツがいる。穴の横から串を入れ、たこ焼きをくるりと90度回す。ここで、うまく回らない場合はまだ焼きが足りない。

しばらく焼いたら、再度90度回して、更に穴からはみ出した生地を穴に押し込みながら、何度もくるくると回転させて焼いていく。こうすることで、たこ焼きはまん丸になり、中まで均一に火が通るのだ。

お好み焼き・たこ焼きについての深い話

たこ焼きパーティー(タコパ)

Takoyaki party is being held where participants are making lots of takoyaki

家でたこ焼きパーティをするのが流行っている。略して「タコパ」だ。家族での食事や友人とのパーティーで、ワイワイ・ガヤガヤと楽しむ。タコパにはたこ焼き器が必要だ。最近はタコパの為に、たこ焼き器を買う人も多い。たこ焼き発祥の地である大阪ではどの家にもタコ焼き器があるという。

店や屋台で食べるたこ焼きとの違いは、そのバリエーションだ。基本のタコ、ネギ、紅ショウガの入ったものにとどまらず、ありとあらゆる具材が試される。最近ではデザートたこ焼きまである。

たこ焼きをうまく焼く技を、友人に披露して自慢する人もいる。中にはプロ顔負の技術を身に着けている人もいる。

ソースとマヨネーズ

Sauce and mayonnaise on okonomiyaki

海外でのお好み焼きとたこ焼きの人気の秘密の1つは、ソースの味にあると言われる。お好み焼きとたこ焼きで、かけるソースは全く同じではないが、どちらも、甘辛な濃厚な味である点が好まれているようだ。

西洋にはウスターソースがある。野菜・果実のジュースなどに酢・香辛料を加えて塩・砂糖で味を整えながら熟成させたもので、糖度は低く、サラっとしている。

他方、お好み焼きやたこ焼きのソースは、トマト、デーツなどの野菜や果実に50種類ほどの原材料が使われており、甘みと旨味の濃厚なドロっとしたソースに仕上がっている。

そして重要なのがマヨネーズだ。マヨネーズの酸味が、お好み焼きやたこ焼きの脂っぽさと、濃厚なソースをさっぱりとさせてくれる。また乳化したクリーム状のマヨネーズは、トロミのあるソースとうまく混じって一体化のある味を生み出すのだ。

焼けた小麦粉の香ばしさ、肉やタコなどの魚介や野菜の旨味、特性ソースの甘味や旨味、そしてマヨネーズの酸味が混然一体となって、お好み焼きやたこ焼きのクセになる美味しさを作り出しているのだ。

和菓子

Several colorful wagashi are on a plate

歴史

Several rice dumplings are on a tray

木の実や果実を古来「くだもの」と呼び、後に中国から漢字が伝わると「菓子」と表記した。これが和菓子の原点ではないかと考えられている。その後、粉状にした木の実や米を使って、団子などが作られたとされる。

奈良時代には、中国から帰国した遣唐使が小麦粉や米粉を油で揚げた唐菓子(からくだもの)を、また鎌倉時代になると、同じく中国から帰国した留学僧が、禅僧の寺院での軽食である点心を伝えたとされる。点心の中には代表的な和菓子である饅頭の原形になるものも含まれていた。

Sliced castella is on a plate

室町時代の終わりになると、キリスト教の宣教師がカステラなどの南蛮菓子を伝えた。当時は貴重であった砂糖を使い、鶏卵を主原料に使った南蛮菓子は和菓子の発展に大きな影響を与えた。

江戸時代には鎖国で海外からの文化の流入が制限される中、日本古来の文化が根付いている京都を中心に、様々な和菓子が作りだされ、現代の和菓子へとつながった。

特徴

桜もち

Kanto style sakura mochi and Kansai style sakura mochi on a plate

「桜もち」は塩漬けした桜の葉で包んだ菓子だ。春をイメージした和菓子で、桃の節句(ひな祭り)には欠かせない。関東風では、小麦粉の生地を焼いた皮で小豆餡を巻き、関西風では、道明寺粉(もち米を蒸してから乾燥させ粗挽きしたもの)で皮を作り小豆餡を包む。

たい焼き / カステラ

Taiyaki and sliced castella are on a plate

「たい焼き」は、鯛を型どった焼き型で焼いた生地で、小豆餡をサンドした菓子だ。鯛のデザインは店によって異なる。カスタードクリームやチョコレートを入れたものもある。

「カステラ」のルーツはポルトガルやスペインであるが、日本で独自の発展を遂げた。オーブンで焼いた後に長方形に切る。原材料に水飴を使い、しっとりとした食感が特徴だ。見た目は西洋のスポンジと似ているが、食感は全く違う。

わらび餅 / 羊羹

Warabimochi and yokan are on a plate

「わらび餅」は、わらび粉(わらびの根から取れる澱粉を粉末にしたもの)で作る。モチモチしながらも口どけのよいのが特徴の和菓子だ。わらび粉が手に入りにくいので、近年では他の澱粉を使用することが多い。きな粉をふり、黒蜜をかけて食べる。わらび粉に抹茶を混ぜて作ったものや、きな粉の代わりに抹茶をふりかけたものもある。

「羊羹」は小豆餡を型に流し込んで寒天で固めた和菓子。寒天が少なく柔らかい水羊羹は夏の風物詩で、お土産や贈り物などにも使われる。寒天の代わりに、小麦粉や葛粉などを加えて蒸し固める蒸し羊羹もある。カットした和栗を混ぜて固めた「栗羊羹」は人気の羊羹だ。

もなか / 落雁

Monaka and rakugan are on a plate

「もなか」は、もち米の粉を水で溶かしてパリパリに焼いた皮で、小豆餡をサンドした和菓子。皮のパリパリした食感を保つため、餡の水分を低く抑えている。皮と餡を分けて販売し、食べるときにサンドできるようにした商品もある。羊羹同様、お土産や贈り物として重宝される。

「落雁」は米の粉、水飴、砂糖などを成形して乾燥させて作る。桜の花など四季の草花や、鶴、亀、鯛、松竹梅など、日本の伝統的な素材を表現したものなどがある。茶席での干菓子(薄茶とともに提供される)やお供えなどに使われることが多く、高貴な場に使われることから、高級和菓子と位置づけられている。

練り切り / ぼた餅

Nerikiri and botamochi are on a plate

「練り切り」は、白あんに山芋や求肥(白玉粉を砂糖と水で練り上げたもの)などのつなぎを加えて練った生地で作る和菓子。茶席での主菓子(濃茶とともに提供される)やお祝いの贈り物にも使われる「上物」と、それ以外の機会に使われる「並物」の2つに分類される。生地に色をつけ、四季の植物や風物詩を表現するのが特徴で、和菓子職人の感性と力量が問われる。

「ぼた餅」は、もち米とうるち米を炊いて米粒をつぶして丸または俵型に成形し、小豆餡やきな粉をまぶして作る和菓子。もち米だけを使うこともある。お彼岸に食べられる。昔は庶民のご馳走で、来客、お祝い、地域の集まりに供されていた。法要の際のお供えとしても使う。

柏餅 / 菱餅

Kashiwamochi and hishimochi are aon a plate

「柏餅」は餅で小豆餡を包み、カシワの葉で包んで蒸しあげた和菓子。男子の成長や長寿、子孫繁栄などを願って端午の節句に食べられる。小豆餡の代わりに味噌餡を入れたものもある。また餅はもち米ではなく、うるち米を使う場合が多い。

「菱餅」は、桃の節句(ひな祭り)の雛人形に一緒に供える菱形の餅で、行事食だ。女子の成長や長寿、子孫繁栄などを願って飾られる。ピンクの餅は桃の花、白い餅は残雪、緑の餅は若草を表現している。

深い話

和菓子で四季を表現する

Two Jelly including edible flowers are on a blue plate

四季のある国は日本だけではないが、日本では季節と食べ物、行事が濃密にリンクしている。日本には二十四節気という四季を更に6つに分けた暦がある。立春や秋分などが代表的な例だ。

TVのニュースでも、今日が二十四節気のどの日に当たるかを報道する。和菓子はこの移り行く季節を、その形や色合い、使用する材料で表現したものが多い。その季節にふさわしい和菓子を選んで贈ったり、皆で集まって食べたりする文化が根付いている。

日々の暮らしと和菓子

A seasonal gift wrapped in a furoshiki (Japanese wrapping cloth)

和菓子は甘いお菓子というだけでなく、日本人の暮らしに深く結びついている。茶会はその代表例だ。茶席で提供される代表的な和菓子は、「練り切り」や「落雁」だ。

また、桃の節句には「菱餅」や「桜もち」、端午の節句には「柏餅」、お彼岸には「ぼた餅」というように、季節ごとの祝い事には決まった和菓子を食べる習慣がある。

更に、お中元やお歳暮、友人やお世話になった人を訪問する際の贈り物として和菓子を持参する文化が残っている。風呂敷という鮮やかな布で包んで持参するのが、古くからある習慣だ。

ラーメン

Tonkotsu ramen and soy-sauce-based ramen

歴史

A kitchen of a ramen shop

「ラーメン」は中国の発祥の「拉面」がその起源だ。「拉」とは「引く」という意味で、麺を作る時、引いて長く伸ばすので「拉面」だ。

日本のラーメンは、かん水(アルカリ塩水溶液)を加えてコシをつけるのが特徴だ。スープやトッピングにこだわる点でも、中国のラーメンとは大きく違う料理として発達した。「日式拉面」として中国でも人気がある。

江戸時代末に港町である横浜、神戸、長崎、函館に多くの外国人が移り住み、この時に中国の拉面が入ってきたのがその始まりといわれる。

1910年に、東京の浅草に、中華料理店「来々軒」が開店した。横浜中華街から中国人料理人を招き、中国の麺料理と日本の食文化が融合してできた「ラーメン」を提供した。当時ラーメンは「南京そば」、「支那そば」などと呼ばれていた。

第二次大戦後には、中国大陸からの引き揚げ者によるラーメン屋台も多く出現、現代にいたるまで、約100年間にわたり様々なアレンジが加えられていき、ラーメンは日本独自のメニューとして発展してきたのである。

特徴

日本各地のラーメン

博多ラーメン / 喜多方ラーメン
Hakata ramen and Kitakata ramen

まず何といっても国内でも海外でも人気なのが、豚骨ラーメン。代表選手は「博多ラーメン」だ。極細のストレート麺を使う。豚骨を強火で沸騰させることで、骨のコラーゲンが溶け出した白濁したスープが特徴だ。「替え玉」といって、麺だけのお代わりもできる。

「喜多方ラーメン」は醤油ラーメンの代表選手だ。海外では、豚骨スープに次いで醤油スープのラーメンが人気がある。

函館ラーメン / 札幌ラーメン
Hakodate ramen and Sapporo ramen

あっさり塩味の「函館ラーメン」、濃厚な味噌味の「札幌ラーメン」などもよく知られたラーメンだ。

熊本ラーメン / 長崎ちゃんぽん
Kumamoto ramen and Nagasaki Champon

「熊本ラーメン」は豚骨に鶏ガラを合わせる。鶏ガラが豚骨のクセを和らげ、「博多ラーメン」よりマイルドなスープに仕上がっている。黒いマー油(にんにくを揚げた油)を入れるのも特徴だ。

豚肉、魚介、野菜、蒲鉾など10数種類の具材をラードで炒めてのせるのは「長崎ちゃんぽん」だ。「ちゃんぽん」はいろいろなものを混ぜるという意味の言葉だ。野菜の旨味がスープに溶け込んでいる。

富山ブラックラーメン / 沖縄そば
Toyama black ramen and Okinawa soba

「富山ブラックラーメン」は濃い口醤油による真っ黒なスープが特徴だ。スープは塩気が強く、白米と一緒に食べるのが普通だ。

「沖縄そば」は豚骨を使うが、鰹だしも効いていて、ラーメンとうどんの中間のような独特の味わいだ。沖縄は地理的にも台湾や中国の南部に近く、「沖縄そば」は中華料理と和食の2つの文化の影響を受けながら発達した独特な料理だ。

トッピングや食べ方によるラーメンの分類

ワンタン麺 / チャーシュー麺
Wonton ramen and char-siu ramen

「ワンタン麺」はラーメンの上に、ワンタンをのせたものだ。ラーメンもワンタンも同じ麺類でダブってしまうのだが、意外と人気のあるメニューだ。

チャーシューを山盛りにしたチャーシュー麺は人気メニューだ。普通のラーメンでも、チャーシューは典型的なトッピングとして使われているが、そのチャーシューをトッピングのメインにした垂涎もののラーメンだ。

カレーラーメン / あんかけラーメン
Curry ramen and ankake ramen

カレーとラーメンという大人気メニューを合わせてしまったのが「カレーラーメン」だ。中華のスープとカレーは相性がよい。麺を食べるときに、スープがはねて服に染みをつけないよう要注意!

「あんかけ」ラーメンは、海老、イカなどの魚介類や、ネギ、椎茸、竹の子などの野菜を炒め、片栗粉でとろみをつけてからラーメンにかける。食べ進めると、トロミに封じこめられた具材の旨味が、 少しずつスープに溶け出していくのだ。「長崎ちゃんぽん」と並んで、野菜がたくさんとれるラーメンだ。

つけ麺 / 和えそば
Tsuke men and ae soba

「つけ麺」はスープなしのラーメンで、濃い目のつけダレにつけながら食べるラーメン。麺をどの程度タレにつけるかを自分で調節でき、例えば麺の長さの半分だけタレにつけて、麺そのもの味や食感と、タレと一緒になった麺の味の両方を味わうことができる。

これは、代表的な和食である「ざるそば」と同じ食べ方だ。シナチクや卵などの具材も、それだけをタレにつけて楽しむこともできるし、麺と絡めて一緒にタレにつけて食べることもできる。自分の好きな食べ方で食べればよいのだ。

「ざるそば」について詳しく知りたい方は、こちらから:“知っておきたい8つの日本食” / “そば”/”そばつゆで食べる蕎麦と汁蕎麦”

「和えそば」は丼の下部に濃い目タレが入っている。それを自分の好むように、麺に混ぜながら食べる。完全に混ぜてしまってもよいし、食べる分だけ、少しづつ混ぜてもよい。「つけ麺」と考え方が似ているが、「和えそば」の場合は麺以外の具材も最初から丼に入っていて、麺と具材を一緒に食べるところが違いだ。

深い話

ラーメン屋の秘密

A red shop curtain of a ramen shop

ラーメン屋には魔力がある。街の至る所にはラーメン屋があり、ぎっしりと旨味の詰まったスープと、炭水化物である麺の入ったラーメンは、一杯で十分な満足感を与えてくれる。しかも、それが1000円前後というお手頃価格だ。

ラーメンを注文すると驚くほどの短時間で出てくる。これを可能にしているのが、ラーメン屋の調理システムだ。注文を受けたら、湯を沸かしてある寸胴で麺をゆでる。ゆでている間に、事前に仕込んだ複合調味料を丼に入れ、鶏や豚、魚介や野菜でとったスープを注ぎ入れて、調味料を適切な濃さのラーメンスープに仕上げておく。ゆであがった麺を丼に入れて、別に用意したチャーシューなどの具材をトッピングして提供だ。わずか数分で提供という手早さだ。

食べたいときに、気に入ったラーメン屋で、好きな種類のラーメンを選んで、すぐに食べられる。 空腹でも、注文するとすぐに出てきて、手軽な価格で食べられ、お腹が満たされるのだから、やみつきになるのも納得がいく。

ラーメンの人気の秘密はその中毒性

Soup stock for ramen being extracted out of pork bones

ラーメンはなぜにこんなに美味しいいのか、どうして何度も食べたくなるのか。

その秘密の第一の秘密が、鶏ガラ、豚骨、鰹節、昆布など複数の食材を使ってとった旨味たっぷりなスープだ。和食では鰹節だしや昆布のだしを単独で使ったり、鰹節と昆布の合わせだしを使うのが通常だが、ラーメンのスープでは、より多くの食材からだしをとるため、アミノ酸、イノシン酸、コハク酸などの旨味成分が凝縮している。また小麦粉でできている麺は炭水化物(糖質)で、具材に多く使われるチャーシューには動物脂肪が含まれている。

「だし」「うま味」について詳しく知りたい方は、こちらから:“知っておきたい8つの日本食” / “だし”/

つまり、うま味と糖質と脂肪が多く含まれているラーメンは、脳が美味しいと感じる要素がそろっている、体が欲する食べ物なのだ。

もう1つ興味深いのは、飲酒後に無性にラーメンが食べたくなることだ。ただ、飲酒でアルコールとおつまみを食べた上に、ラーメンを食べるのはカロリーの取りすぎになるおそれがあるので、飲酒後のラーメンは、その食べる頻度をコントロールするなどの注意が必要だろう。

箸で切れるトロトロのチャーシュー

Char-siu picked up by chopsticks

一番存在感のあるラーメンのトッピングが「チャーシュー」であることに異存はないだろう。チャーシューは元来中国料理で、豚のブロック肉を醤油などの調味液に漬けてから、炙り焼きにして作る。いわば”焼き豚“だ。こうして作るものもあるが、日本のラーメンのチャーシューでは、豚のブロック肉を、煮崩れないよういに、タコ糸などで縛ってから、醤油・みりん・酒・香味野菜などと一緒に煮込んで作るものが主流だ。

じっくりと煮込んで作ったチャーシューは、箸で切れるほど柔らかく、口の中で、ホロホロと崩れる。調味液を吸った豚肉の旨味と脂の旨味が口の中いっぱいに広がり、たまらなく美味しい。

豚肉の部位の違う複数種類のチャーシューの入ったラーメンを提供する店や、炙って作ったチャーシューと煮て作ったチャーシューの両方の入ったラーメンを提供する店もある。鶏肉で作った、あっさり風味のチャーシューの入ったラーメンを提供する店もある。

そば

A blue shop curtain of a soba shop

歴史

Illustration of soba stall in Edo period

「蕎麦」は、蕎麦の実を粉にして作った麺だ。奈良時代から栽培されていた記録があり、古来は蕎麦粉を熱湯でこねて作った「蕎麦がき」として食べていたが、その後、「蕎麦きり」といって切って茹でて食べる現在の蕎麦に変化していった。

蕎麦は、江戸時代中期から江戸で流行したと言われる。短時間で提供できる蕎麦は、短気な江戸っ子の気質にもあっていたのかもしれない。江戸っ子は、ノド越しを楽しむために、蕎麦をあまり噛まずに、飲み込むように食べるのが粋だと考えていたようだ。

 江戸っ子にとって蕎麦はとても身近なもので、落語のテーマにも多く扱われている。落語家が落語の中で、閉じた扇子を箸に見立てて、蕎麦をすするシーンが度々でてくる。現在の落語でも、この蕎麦を食べるシーンで観客がどっと沸くことが多い。

A shop curtain of a soba shop

蕎麦屋は日本全国に18,000店以上あると言わる。ふだん食べる他、大晦日には多くの日本人が「年越しそば」を食べる。蕎麦は、うどんなど他の麺よりは切れやすい為、「今年起きた嫌なことをすっぱりと断ち切る」という意味合いが込められていると言われる。また「蕎麦のように細く長く生きられるように」という願いが込められているという説もある。

特徴

蕎麦粉の割合と製粉方法による分類

Juwari soba(soba made of 100% buckwheat) on a colander

蕎麦は通常、蕎麦粉の他に小麦粉を「つなぎ」に使う。麺にしなやかさを加え、食感を滑らかにするためだ。蕎麦粉を100%使った蕎麦を「十割そば」という。十割蕎麦は、噛むと、サクっと切れ、蕎麦粉の香りが口の中に広がる。小麦粉を20%混ぜ、蕎麦粉を80%使った蕎麦を「二八蕎麦」という。ツルっとした食感と蕎麦の香りの両方を楽しめる蕎麦だ。他にも蕎麦粉の割合を変えたいろいろな蕎麦がある。

Sarashina soba and hikigurumi soba

同じ蕎麦粉でも製粉方法によってその特徴が異なり、作る蕎麦の味も変わってくる。

蕎麦の実の中心部だけの白い蕎麦粉を「更科粉」という。蕎麦の香り自体は弱めだが、のど越しが良く、甘みのある上品な蕎麦ができる。皮やそれ以外の部分も一緒に挽いた粉を「挽ぐるみ」の蕎麦粉といい、色が濃く、香りの強い蕎麦に仕上がる。

そばつゆで食べる蕎麦と汁蕎麦

Soba with dipping sauce

蕎麦と言えば、茹でた蕎麦を水でしめた蕎麦を、そばつゆにつけて食べる「もり蕎麦」や「ざる蕎麦」を思い浮かべる人が多いだろう。

Tempura soba and nishin(herring)soba
Niku(beef) soba and kamo-namban(duck) soba

他方、温かい汁に入った汁蕎麦もある。具材の入っていないのが「かけ蕎麦」だ。天ぷらをのせたものが、「天ぷら蕎麦」だが、ざる蕎麦にも、天ぷらを別皿で添えた「天ざる蕎麦」がある。汁蕎麦の「天ぷら蕎麦」は天ぷらに汁が染み、また天ぷらの旨味が汁に溶け出し、まったりした美味しさを作り出す。汁蕎麦は、のせる具材のバリエーションが多く、鰊(にしん)をのせた「にしん蕎麦」、牛肉をのせた「肉蕎麦」、鴨肉をのせた「鴨南蛮そば」などが代表的だ。

練りこみ蕎麦

Soba kneaded with matcha, soba with Black sesame and soba with pickled plum

蕎麦にはいろんな具材を練りこんだものがある。有名なのは抹茶を練りこんだ「茶そば」だが、練りこみ蕎麦のルーツはひな祭りにある。今では、ほとんど行われなくなったが、昔はひな壇に3~5色の蕎麦をお供えし、ひな祭りの行事が終わると家族で食べたのだ。桜エビや卵、抹茶などを練りこんだ。梅や黒ゴマを練りこんだ蕎麦もあった。

深い話

そば湯

Preparation of soba yu (boiled water after cooking soba)

蕎麦は他の穀物よりカロリーが低く、多くのたんぱく質やビタミン類、ミネラルなどを含んでいる。

その多くがゆで汁に溶け出してしまう。このゆで汁の栄養も捨てることなく摂取できるのが「そば湯」(蕎麦のゆで汁)だ。ダシの効いた蕎麦つゆを、この「そば湯」で希釈して飲む。江戸時代からの習慣と言われている。

訪日外国人に人気の蕎麦打ち体験

Soba in the process of preparation using a special soba knife

訪日外国人のコト消費の人気が上昇中だが、人気のコト消費の1つが「蕎麦打ち体験」だ。

日本の伝統食で健康食のイメージもある。そんな蕎麦の作り方を、職人が基礎から英語で丁寧に教えてくれるのだ。しかも自分で作った蕎麦が最後に食べられる。

実際に参加してみると、蕎麦を捏ねるのに思いのほか力が必要だったり、パスタと違って、専用包丁で蕎麦を細く切ったりと、結構楽しい。自分で実際に作ってみることでで、和食文化をより深く学べたと満足する人も多いようだ。

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