試すべきこと1:銀山温泉の風景を楽しむ
1日の中で刻々と変わる銀山温泉の風景

銀山温泉へ向けて山道を下る。左にカーブしながら道を下っていくと銀山川が見え、次の瞬間、銀山温泉の入り口である白金橋が見えくる。さらに進むと銀山温泉の街が突然目の前に広がる。見たこともないレトロな町並みに感動する。
銀山温泉は山形県東部に位置する尾花沢市にある。Ginzanとは銀鉱山のことだ。江戸時代から銀鉱山として栄え、閉山後は川沿いに湧き出る源泉を利用した温泉旅館が建ち並んだ。大正2年(1913年)の大洪水で壊滅的な被害を受けたが、修復され、現在のような町並みになった。
そのノスタルジックな雰囲気は、まるで映画『千と千尋の神隠し』の舞台のようだと言う人も多い。

銀山温泉では川沿いに旅館が建っている。川沿いに湧き出る源泉を内風呂に引いているのだ。泉質は硫黄泉で、わずかに塩味がある。
一帯には、大正時代から昭和初期にかけて建てられた木造多層の旅館が立ち並ぶ。多くの旅館は3階建てや4階建ての木造建物で、建築当時としては非常にモダンな建物だった。
アメリカで発展したシンメトリーで優雅なアール・デコのデザインに影響を受けた、大正から昭和にかけての日本の職人たちは、アール・デコを日本人の感性でとらえ直し、”ジャパン・デコ”ともいえる様式を創り出した。これを使った和風の洋館が盛んに建てられた。

夕暮れから夜にかけての銀山温泉の美しさは格別だ。最初は薄暗かった空がさらに暗くなり、漆喰壁の旅館がガス灯に照らされ、暗いながらも神秘的な青空に浮かび上がる景色は、何とも言えない美しさだ。

夜の銀山温泉の町並みは息をのむほど美しい。旅館の窓には明かりが灯り、ガス灯のオレンジ色の光が街を照らす。夕食を終えた観光客がのんびりと街を散策する。日常から完全に隔離された贅沢な空間で、ゆったりとした時間が流れる。

ガス灯の柔らかなオレンジ色は、建物や街並みを柔らかく映し出し、銀山川の水面に反射する。
銀山温泉の冬

新緑や紅葉の銀山温泉ももちろん美しいが、多くの人は銀山温泉はやはり冬だという。それは雪があるからだ。銀山温泉のレトロな建物と街に降り積もった雪の中をみていると、まるで時が止まったかのような錯覚に陥るのだ。


暗闇が訪れると、ガス灯の光が雪に覆われた地面をやさしく照らす。まるで映画のワンシーンのようだ。
試すべきこと2:芸実的な銀山温泉のストリートを探索する
レトロで優美な旅館の建物


木造3階建て、4階建ての旅館の中には、100年以上の歴史を持ち、国の登録有形文化財に指定されているものもある。
これらの旅館には、当時のままの柱や階段、手すりなどがある。100年前の人々が使っていたことを想像すると、タイムスリップしたような感覚に襲われるようだ。
コテ絵





コテ絵は、左官職人が鏝(コテ)を使って仕上げる。題材は主に福を呼ぶ物語、花鳥風月などで、色彩豊かな漆喰で表現される。漆喰は富の象徴として、裕福な商人たちが建物の外壁に装飾として用いることが多かった。
銀山温泉では、水害によってダメージを受けた茅葺き屋根の旅館街が木造の高層旅館街に建て替えられた当時、各旅館が競ってコテ絵を壁に飾り、その豪華さを誇示したのだろう。

ある旅館には、一年の行事を月毎に表現した12のコテ絵がある。
1月 は正月、2月は 節分、3月はひな祭り、4月 は満開の桜、5月はこいのぼり、6月は 田植え、7月は 七夕、8月は夏祭り、9月は お月見、10月は 稲刈り、11月 は七五三、そして12月は湯治だ。
道に埋め込まれた芸実的なタイル

豪雪地帯にある銀山温泉の石畳には、そのあちこちに、色とりどりの雪の結晶のタイルが埋め込まれている。
街中の足湯


銀山温泉には2つの足湯がある。ひとつは銀山温泉の入り口に近い川沿い、白金橋の近くにあり、もうひとつは温泉街の真ん中にある橋の上にある。足湯は、銀山温泉の源泉を使っていて、温泉旅館でもこれを使っている。温泉の温度は高めで、わずかに硫黄の香りがする。旅行客は風情ある町並みを眺めながら無料で足湯でくつろぐことができる。
レトロな街の風景


旅館のほかにも、銀山温泉にはレトロな風景がたくさんある。蕎麦屋、喫茶店、土産物屋の建物、壁に貼られた古いポスターなどは、どれも絵になる。
上の写真は、古い郵便ポストのある土産屋と銀山温泉の古い地図だ。
試すべきこと3:山形の名産品を味わう
日本そば

銀山温泉のある山形県はそばの名産地だ。山形のそばは太くてコシがあるのが特徴だ。山形を代表するそばのひとつに、杉板で作った浅い箱に盛られた板そばがある。板そばは、その昔、地元の集まりで大人数で食べたのが始まりと言われている。

この地域でもうひとつ有名なそばが肉そばだ。鶏肉とネギがトッピングされている。肉そばには温かい汁のものと冷たい汁もものがあるが、有名なのは冷たい汁の方だ。冷たい汁の方がそばの食べ方に合っていたのだ。日本酒を飲みながら鶏肉を先に食べ、〆にそばを食べても、そばがのびてしまわないからだ。
10月頃に銀山温泉を訪れるなら、新そば祭りがいつ開催されるかをチェックしておこう。その年に収穫された新そばは、この新そば祭りが終わってから提供される。新そば祭り直後に銀山温泉を訪れれば、採れたての新そばを味わうことができる。
そばについて詳しくはコチラから: “知っておきたい8つの日本食” / “そば”
山形牛

銀山温泉に来たら、山形牛を堪能したい。山形牛を出す旅館は多い。旅館を予約するときに、山形牛が食べられるかどうか確認したほうがいい。
寒暖の差が激しい山形の気候下では、牛は少しゆっくり成長する。結果として、牛の飼育期間は通常よりやや長くなる。そのため。山形牛は肉質がきめ細かく、赤身にはきめ細かい霜降りのサシが入っているため、しっかりとした赤身の旨味と甘い脂の風味が楽しめる。
芋煮

芋煮は、里芋、牛肉、こんにゃく、ネギなどを醤油と砂糖のだし汁で煮込んだシンプルな鍋料理だ。山形など東北地方で広く食べられている。秋から冬にかけての寒い時期に食べると、体の芯から温まる。銀山温泉の旅館で出されることもある。
芋煮の始まりは1600年代半ばと言われている。山形の最上川の船着き場で船乗りたちが宴会を開き、荷受人が現れるまで河原で鍋を囲んだのがルーツと言われている。
現在でも、山形をはじめとする東北地方では、河川敷などに集団で集まり、家族や友人、地域、学校、職場などで芋煮会が行われている。
フルーツ

山形県は「フルーツ王国」として知られ、さくらんぼ、梨、ぶどう、スイカ、柿など、全国有数の収穫量を誇る。
なかでも有名なのがさくらんぼだ。代表的な品種は佐藤錦。鮮やかな赤色で、糖度が高く、酸味が少なく、果汁が豊富で、6月中旬から7月上旬にかけて旬を迎えるので、この時期に銀山温泉や山形の観光地を訪れる機会があれば、ぜひ味わってみたい。

銀山温泉では、その季節の旬のフルーツを使ったデザートが楽しめる。上の写真はぶどうのパフェ。デザートに使われるフルーツは、訪れる季節によって異なる。
ネイティブ日本人からのアドバイス
尾花沢そば街道

山形県は豊かな水とそばの栽培に適した気候から「そば王国」としても有名だ。特に最上川流域の尾花沢、大石田、村山には3つのそば街道があり、そば屋が軒を連ねている。
銀山温泉からはタクシーに乗る必要があるが、そば好きなら10軒以上のそば屋が軒を連ねる尾花沢そば街道を目指すのも一案だ。尾花沢は山形県一のそばの生産量を誇り、そのおいしさの秘密は寒暖差40度という厳しい気候にある。
山形ラーメン

尾花沢市内にもラーメン店は多い。実は尾花沢市のある山形県は、全国でも有数のラーメン消費県なのだ。
総務省の調査では、山形県の1世帯当たりの年間ラーメン消費額(外食)は2022年、2023年と2年連続で日本一となっている。銀山温泉のある尾花沢市内でも山形ラーメンを楽しむことができる。銀山温泉から市街地に出て、山形ラーメンを食べてみてはいかがだろうか。
山形ラーメンは、上の写真のように醤油ベースのスープに中華麺を入れたもの。山形ではラーメンを「中華そば」と呼ぶことが多い。そば屋でも中華そばと称してラーメンを出すことが多い。つまり山形では、そば屋でもラーメン屋でも山形ラーメンを提供しているのだ。

ひやしラーメンは山形のユニークなメニューである。ひやしラーメンは冷たい麺料理で、スープも麺も冷たく、氷を浮かべることもある。生野菜が添えられることもある。上の写真のひやしラーメンでは、貝割れ大根とトマトのスライスがのせられている。
もちろん、尾花沢のラーメン店の多くは醤油ベースの山形ラーメン(中華そば)を提供しているが、現在では伝統的な醤油ベースのラーメンだけでなく、様々に工夫をこらした美味しいラーメンを提供している。
ラーメンについて詳しくはコチラから: “知っておきたい8つの日本食” / “ラーメン”
アクセス情報
銀山温泉へ
JR線大石田駅からバスまたはタクシーで40分。
バスの本数は1日5本程度なので、利用する場合は注意が必要だ。時刻表の確認はこちらの 「はながさバス」のホームページ から。
山形空港からバスまたはタクシーで1時間15分。
「おいしい山形空港観光バス」は予約不要。バスの詳細はこちらの 「おいしい山形空港観光バス」のホームページから。
「おいしい山形空港観光ライナー(タクシー)」は前日17時までの事前予約が必要。タクシーの詳細はこちらの「おいしい山形空港」バス・ライナー予約ページから。