試すべきこと1:十円硬貨の平等院と本物の平等院を比べてみる
平等院
平等院は、9世紀後半に貴族の別邸として建てられたのが始まりで、11世紀半ばに藤原頼通によって寺院として再建された。
当時は天災や人災が続いた結果、末法思想が蔓延し、仏教は滅びると信じられていた。仏教の目的も、現世での救済から来世での救済へと変わっていった。
平等院の「平等」が示す通り、平等院は、仏の救済が誰にとっても平等であることを願って建てられた。
人は死後、極楽浄土に行きたいと願う。平等院は、そのような思いから建てられたのだ。平等院と宇治川、それに周囲の山々を含めたその全体が極楽浄土とみなされている。
平等院は「古都京都の文化財」としてユネスコの世界遺産に登録されている。
鳳凰堂と本尊の阿弥陀如来坐像は国宝に指定されている。屋根の上の鳳凰は見どころの1つだが、これはレプリカ。錆による破損を防ぐため、本物は平等院境内のミュージアム鳳翔館で保管されており、見ることができる。
平等院を訪れた証として、2種類の「御朱印」をもらうことができる。御朱印について詳しく知りたい方は、こちらから:“伏見稲荷といなり寿司” / “御朱印“
十円硬貨に描かれた建物
十円硬貨に描かれている建物は平等院鳳凰堂。鳳凰堂は、中央の建物と左右の廊下、奥の廊下からなり、それらが鳳凰が羽を広げたような形に見える。
平等院を訪れる日本人の中には、コインに描かれた鳳凰堂と実物を見比べる人もいる。コインと鳳凰堂を並べて写真を撮る人もいる。皆さんも日本人に混じって写真を撮ってみてはどうだろうか。
ハワイの平等院
ハワイのオアフ島には、日本の平等院鳳凰堂を模した平等院がある。ハワイにそんな日本の風景あるのは、ちょっと驚きだ。この建物は日本人のハワイ移住100周年を記念して1968年に建てられた。 但し、平等院という名前ではなく、バレー・オブ・ザ・テンプルズ・メモリアルパークという名前の霊園だ。
とてもリアルで美しい。ここでは、日本のようにおみくじも買える。おみくじについて詳しく知りたい方は、こちらから:“伏見稲荷といなり寿司” / “おみくじ“
この霊園は宗教を問わないので、キリスト教式の十字架のお墓や日本式の仏教のお墓などもある。
試すべきこと2: 茶会体験
抹茶
平等院のある宇治は、抹茶の名所のひとつ。宇治で抹茶を様々な方法で味わってみよう。
抹茶の農家は、4月の新芽の時期に茶葉を覆い、日光を遮って茶葉に含まれる旨味成分を保持させ、抹茶独特の風味を生み出す。また、日照時間が短い環境下で、茶葉は十分な養分を作ろうとして、より多くの葉緑体を作る。こうして茶葉の緑色は濃くなっていく。
その後、茶葉を蒸して乾燥させ、石臼で挽いて緑色の微粉末にする。
通常、緑茶はお湯で抽出するが、抹茶はその微粉末をお湯に溶かして、そのまま飲むため、茶葉の栄養素をまるごと摂取できる。
茶道と茶会
日本の伝統文化である茶道は、16世紀に千利休が茶道の四大精神である「和敬清寂」を説き、現在の様式を確立したといわれている。
茶室(ちゃしつ)と呼ばれる、茶道具を備えた畳敷きの小部屋で茶会を開いて客を招き、定められた作法に従って抹茶を点てながら客をもてなす。
茶室には掛け軸や生け花があり、それらを鑑賞するのも茶会の作法のひとつだ。
茶会では、亭主が布巾で道具を清め、抹茶に湯を注ぎ、茶筅(竹の泡立て器)でかき混ぜながら茶碗に茶を点てる。
亭主はまず和菓子を出し、それから抹茶を出す。流派よって細かい作法は異なる。
抹茶には薄茶と濃茶がある。抹茶をコーヒーに例えると、薄茶はレギュラーコーヒー、濃茶はエスプレッソのようなものだ。
薄茶は抹茶特有の苦味があるが、比較的あっさりとした味わいで飲みやすい。一方、濃茶は抹茶の風味が豊かで粘度が高いのが特徴だ。
フォーマルな茶会では通常、濃茶が出されるが、実際にどちらが出されるかは、個々の茶会による。食事を含むフルコースの茶会では、まず食事が出され、次に濃茶が出され、その後に薄茶が出される。
15世紀後半から16世紀後半(戦国時代)には、武将にとって茶道は一般教養であり、ステータスシンボルだった。茶会の作法に精通し、茶道具の目利きであることは、富と権力を持つ一流の武将であることの証明でもあった。
殺し合いが日常茶飯事だった戦国時代、湯を沸かし、茶を点て、茶室で静かに味わうことは、禅の精神に通じ、武将たちが平静を取り戻す方法でもあったのだ。
茶道の底流には「わび」と「さび」の思想がある。「わび」とは、謙虚さや素朴さを意味する。簡素の中に精神の充実と美を求める思想である。「さび」とは、時の経過による劣化を意味する。色褪せるものにこそ美があるという思想だ。
こうしたネガティブな感情の中に美を感じるのは、日本人独特であり、茶道の精神はその典型だ。
茶会体験
宇治では初心者向けの体験コースがいくつか用意されており、茶会を体験してみてはどうだろう。お茶会の作法は、各コースの講師が親切に教えてくれるので安心だ。
茶会気分を味わいたいなら、レンタル着物で参加するのもいいだろう。
茶会体験ができる施設のひとつが、宇治市が、宇治茶と茶道を広めるために作った茶室「対鳳庵」だ。
対鳳庵の詳細については、こちらの「対鳳庵」のホームページから。
試すべきこと2: 抹茶スイーツと茶そばを味わう
抹茶スイーツ
抹茶スイーツの種類は数えきれないほど多い。抹茶スイーツは世界的に知られるようになり、多くの国でも食べられるようになったが、やはり京都・宇治で本場の抹茶スイーツを味わいたい。宇治の街角のカフェでは、どこでも抹茶スイーツが食べられる。
伝統的な和風の抹茶スイーツだけでなく、洋風の抹茶スイーツも新しく誕生している。
和風抹茶スイーツ
和風の抹茶スイーツには、抹茶団子、抹茶のかき氷、抹茶羊羹、抹茶カステラ、抹茶の八ッ橋などがある。
上記の写真は抹茶わらび餅で、わらび粉(ワラビの根から取れるでんぷんを粉末にしたもの)を使用し、モチモチとした食感となめらかさが特徴。抹茶をふりかけ、黒蜜をかけて食べる。
洋風抹茶スイーツ
パフェ、ロールケーキ、アイスクリーム、パウンドケーキなど、洋風の抹茶スイーツもたくさんあるが、日本では新しい抹茶スイーツが続々と誕生している。その理由は、抹茶の苦みが生クリームや砂糖の甘みと相性がよく、独特の緑色の見た目が美しいからだ。
抹茶スイーツは代表的な和菓子のひとつである。和菓子について詳しく知りたい方は、こちらから:“知っておきたい8つの日本食” / “和菓子“
茶そば
抹茶を練り込んだ茶そばも食べておきたい。抹茶を練り込んだ茶そばは、蕎麦の実の中心部分だけを使った白い蕎麦粉に、抹茶粉などを加えて美しい緑色に仕上げている。噛むと抹茶の香りが口の中に広がる。
茶そばは、そばの一種で、日本には他にも様々なそばがある。そばについて詳しく知りたい方は、こちらから:“知っておきたい8つの日本食” / “そば“
ネイティブ日本人からのアドバイス
平等院を訪れる季節を選ぶ
晩春に平等院を訪れるなら、藤の花を愛でることをお忘れなく。 しだれ藤は本当に美しい。藤は昔、貴族に愛され、繁栄の象徴とされていた。
3月末から4月初旬に平等院を訪れるなら、桜が美しい。鳳凰堂の近くでは2種類の桜を見ることができる。ひとつは通常のソメイヨシノ(写真上左)、もうひとつは枝垂れ桜(写真上右)だ。
玉露とほうじ茶
宇治が抹茶の産地として有名なのは、宇治が良質な茶葉を生産していることを意味する。宇治では抹茶以外にも「玉露」(写真左)や「ほうじ茶」(写真右)といった日本茶を、多くの茶葉店やカフェで楽しむことができる。
玉露は抹茶とともに高級茶に分類される。茶葉の育て方は抹茶も玉露も同じ。但し、抹茶は蒸した茶葉を揉まずに乾燥させ、粉にするのに対し、玉露は蒸した茶葉を揉みながら乾燥させ、粉にしない。
玉露の茶葉を揉むのは、茶葉に含まれる酸化酵素を活性化させ、発酵を促進させるためである。飲むときは熱湯を注いで抽出する。
ほうじ茶は、覆いをせずに育てた茶葉を焙じたお茶。独特の香りがあり、苦味や渋みが少なく、口当たりが軽い。食事中のお茶に適している。
宇治の多くの土産物店やカフェでは、抹茶アイスと一緒にほうじ茶アイスが食べられる。独特の香りとミルクの風味が絶妙なバランスでとても美味しい。写真左が抹茶アイス、右がほうじ茶アイス。
家で宇治抹茶で抹茶ラテを作ろう
本格的な宇治抹茶を使った抹茶ラテを家で作ってみよう。簡単に作れて、とてもおいしい。
抹茶ラテのレシピ
ボウルに抹茶小さじ2(4g)と砂糖大さじ1(12g)を入れ、抹茶が固まらないようによく混ぜる。
flオンス(45ml)をゆっくり加えながら、泡立て器で泡立てる。 沸騰したお湯1.5
カップに温めた牛乳を5 flオンス(150ml)用意し、泡立てた抹茶を注ぐ。
アイス抹茶ラテを作る場合は、グラスに氷を2.5オンス(70g)入れ、牛乳を5 flオンス(150ml)注ぐ。
泡立てた抹茶を氷の上からゆっくり注ぎ、牛乳の上に泡立てた抹茶の層を作る。
本物の和菓子で抹茶ラテパーティーをしよう
落雁を買って帰って抹茶パーティーをしよう。 落雁は、米粉、水飴、砂糖などを練って乾燥させたもの。桜など四季の花や、鶴・亀・鯛、松竹梅など日本の伝統的な縁起物をかたどったものがある。
落雁は、本格的なお茶会で、お菓子として使われることも多い。抹茶ラテに和菓子を添えてのパーティーは、新しい茶会のスタイルではないだろうか。
アクセス情報
平等院へ
JR「宇治駅」から徒歩約約10分
京阪電車「宇治駅」から徒歩約10分
対鳳庵へ
JR「宇治駅」から徒歩約15分
京阪電車「宇治駅」から徒歩約10分